姫たちの箱庭 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。




GW中も結構な気温の日があったが、
ここ数日も夏日どころか 処によっては真夏日に迫るほどという暑い日々が続いており。
新緑が瑞々しいものの、人々はもっと冷たいものを早々と求めてしまう今日この頃。
八百萬屋でも早々とかき氷がメニューに登場したそうで、

「うう〜〜〜、衣替え、前倒しにしてくれないかなぁ。」
「………。(頷…)」
「ウチはセーラー服だから調節が難しいったら。」

ブラウスにブレザーとかいうタイプなら、上着さえ脱げば結構涼しいが、
合服のセーラー服は 基本上着無しでも春を過ごせるような設定ゆえ、
結構しっかりした生地で仕立ててあり。
寒の戻りはカーディガンを足せばいいが、
ここ数日のような初夏の気候にはただただ苦行を強いられるばかり。

「運動部の子は
 放課後になればとっとと半袖の体操着に着替えればいいのでしょうが。」

何なら施設内にあるシャワーで汗を落とすという手もあるしと、
羨ましそうな言い方になるのも道理。
自身は美術部所属で、そういった融通が使えない。
団扇の代用、下敷き片手にやれやれと、
窓辺の席から いいお日和の校庭を見やるひなげしさんだったが、

「ふっふっふ、剣道部はそうはいかないんですよ、ヘイさん。」

紅ばらさんの長い目の前髪を掻き上げてやり、
白い額の汗をハンカチで拭ってやりながら、
何か企みでもあるかのような芝居がかった口調でわざとらしく笑った白百合さん、

「けが防止のためと 身ごなしや足さばきを身に着けるため、
 素振りだけでもあの袴に道着を着用しなきゃあならないんですからね。」
「うあ、それは悲惨な。」

そりゃあ分厚い、帆布並みの生地で仕立てた道着は、
それだけで結構なプロテクターになる代わり、通気性はないも同然だろうから、
セーラー服どころじゃあない我慢大会になるらしく。

「まあ、そういうのも何のそのとねじ伏せるのも鍛錬ですが。」

実際、竹刀握って一心不乱に素振りや打ち込みに励むときは、
案外と暑さなんて感じないしと、肩をすくめる涼やかな笑顔へ、

 「〜〜〜〜。///////////」
 「久蔵殿でなくたって惚れ直しますよ、その凛々しさ。」

三華様のうちの二人揃って白い手を組み合わせ、
頬の横へと添えて枝垂れつつ “好き好きvv”というポーズをとるものだから、

「こらこら、そういうおふざけしない。」

白百合さんは苦笑で済ませたが、
やや遠巻きになって麗しい同級生をさりげなく見やっていた級友の皆様は、
キャ〜〜っvvと声なき嬌声を上げておられる。

「紅バラ様が可愛らしいポーズをおとりになったわvv」
「何てレアvv」

至近に居られるからこその幸せ、
思わぬタイミングで飛び出すことがある、
意外なお茶目や可愛いおふざけ、若しくはイケメンな言動を間近にて目撃できる至福よ。
やっていることは他愛ない手遊びやお喋りでも、彼女らがという条件が付けば特別な仕儀となり、

「白百合様、紅バラ様の髪をツインテールに結っておられるのね。」
「あああ、ちょっと随分と長さが足らないところがなんか可愛らしい♪」

他のクラスの方々から何て幸運なのと羨ましがられる立場、
どんな幸運とも交換出来はしない幸いに他ならず。

 「…わ。ごめんなさい。」

髪ゴムをクルクルと巻いて絞ってた久蔵殿の金の綿毛、
意外と腰が強かったか、よじったゴムの輪の最後のひとくぐりを弾いて解け、
勢いあまってぴょ〜んとその遠巻き組の方へと飛んだ。
捕まえようと伸ばされた七郎次の手を逃れ、机の上へ不時着したそれ、
それは凛々しくも優美な所作にて席を立ってきた久蔵が
すたすたと歩み寄り、拾い上げつつ “驚かした、済まぬ”とこそり囁けば、

 「あ、いえ。」
 「お気になさらず。」

にっこりお返事したそのまま、
何人かが口許抑えてしゃがみ込み。
居合わせた友らが、こそりと、

「しっかり、傷は浅いわ、ああでも落ち着いて息をして」

というよな声を掛けつつ、
肩を支え、人垣の後方へさりげなく立ち位置を移させる。
その異名に相応しい、清涼な香りをまとった寡黙なご令嬢。
陶貌人形のような精緻な美貌を間近にし、滅多に聞けないお声で話しかけられて、
こんな幸運に舞い上がらない女生徒が居ようか。
しかもしかも、

「先週、紅バラ様に髪を撫でられた Aさんは、
 それをお話した翌日、お父様の会社の株がいきなり二倍に上がって上場なさったとか。」
「それを言ったら、
 五月祭に護衛騎士を演じられたひなげし様に、転びかかったの受け止められた下級生、
 舞い上がったそのまま挑戦した声楽コンテストで金賞取ったとか。」
「剣道の都大会で白百合様を応援に行ったC組のK子さんなぞ、
 落としたタオルを手渡して差し上げた姿を見初められて、
 華族ゆかりのお素敵な殿方との縁談が進行中だとか。」

……何処までホントか、というかどこまで彼女ら関わりなのか。
たまたまの偶然いいことがあったというだけじゃあないのか、
そんなこんなをくっつけられて、幸運の女神さま扱いまでされているらしく。

 “流石にどれも偶然でしょうにねぇ。”

そんな噂というか学園伝説、知っているのは平八さんだけ。
久蔵殿も七郎次さんも存外その手の話には関心が向かないのか気づいてないらしく、
お互いに相手を 天然が過ぎるから困ったお人だと思っているらしいのがご愛嬌。
それは別段そのままでいてくれて構わない、

 “というか、物騒な活劇のほうを知られないようにしなきゃあですよね。”

毎度おなじみの大暴れ、
深窓のご令嬢にあるまじき大暴れの方をこそ、知られないようにしなければ。
別段、素行が悪いの乱暴者だのという方向で暴かれるのは一向に構わないが、(おいおい)
危険な要素が罪のないお嬢様がたへ及んではたまらない。
箸より重いものは持ったことがないよな令嬢らが、巻き添え食って怪我でもなさっては一大事だ。
なので、麗しのお姉さま方が、愛くるしい妹ちゃんが、気高いクラスメートが
校舎裏でひったくりを取っちめる相談とか繰り広げているのは知られちゃあいかんのだ。

 『いっそそのまま大人しくしていてくれればいいものを。』

そうと思われているのへは知らんぷりで、
今日も今日とて、隣町の商店街でこそりと暗躍中の万引きグループへの成敗、
あれこれ構築中の困ったお嬢さんたちなのへ、
佐伯さんでも征樹さんでもいいから早く気付いてほしいものでございます。




   〜Fine〜  18.05.16.


 *いやもう暑いですね。
  陽が落ちてもしばらくは蒸すからもう夏のような陽気です。
  首も膝痛も絶不調で、集中できないのが困りもの。
  妙なお話ですみません。
  今回はまだ暴れてはないお嬢さんたち、
  周囲のお嬢様がたからはこんな格好でも持て囃されとります。
  その筋からすりゃあ悪魔のような娘さんたちなのにねぇ。(う〜ん)

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